発達障害児に中学受験は無理すぎると思うのだが

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発達障害児にこそ中学受験を!という風潮の違和感

うん十年も前に私は中学受験を経験している。新小4(小学三年生の2月にあたる)から塾に通っていた。月に1回休日に模試があり、小5からは夕ご飯がお弁当になったし、小6なんてほとんど毎日塾生活だった。(ちなみに2教科受験でこれ。4教科受験する人なんて全人生を中学受験に注いでるんではないか?)自分は小学校の勉強は問題なくついていけていたし、忘れものもしない、どちらかといえば優等生だったと思う。あくまで小学生の頃は。別に高いレベルの中学を目指したわけでもないが、それでも「中学受験は結構血みどろで大変だった」という思い出だ。うん十年前とはいえ、自分が経験したからこそ言える。アレうちの息子には無理だろ!?
最近「発達障害の子にこそ中学受験を」の声をよく聞くようになった。それが違和感で仕方がないのでこの記事を書いてみた。

なぜ発達障害児に私立中学がよいと言われているのか

特性にあった校風が選べるから

公立中学は公立小学校同様、地域の同学年の子たちが有象無象集まっている。
学校ごとの特徴はとくにない。あっても〇〇部が強いらしい、など部活関係や、屋内プールがあるなど設備関連くらいだ。校長先生の方針による違いもあるだろうが、異動してしまえばまた違う校長先生になるので、「あそこは内申が甘いらしい」と噂で期待しても、先生が異動してしまえばまた方針も雰囲気も変わってしまう。

その点私立だと、「自然が多い」「とにかく自由で制服もない」「カトリック精神に基づく教育」「まるで大学のような授業」「ICT教育に力をいれている」など、学校によって校風がかなり違う。その子にあった学校を選択できる(合格するかどうかは別として)メリットはあるということだろう。

高校受験がないから(内申を気にしなくていいから)

発達障害の子の多くにみられる「忘れ物が多い」「提出物ができない」という不注意特性。公立中ではいくら定期試験をがんばっても「忘れ物」「未提出物」はかなり内申点的にマイナスらしい。
また、中学受験では(御三家なんかを目指さない限りは)「国語」「算数」の2教科で受験できるところも多いが、高校受験となると「英・国・数・理・社」の5教科を勉強しなくてはならず、それも中学レベルなのでかなり大変だ。2教科で受験できるうちにしてしまって、あわよくば大学まで付属の中学にはいってしまえばとりあえず安心なのではないか、と思ってしまう。

人間関係のトラブルが少ないから

公立学校の有象無象とはちがい、みな「受験」を経て入学してきている子たちだ。また、親の経済力や家庭環境も最低限ちゃんとしているだろう。極端に家庭環境が悪いとか、素行が悪いような子はいない。多少の人間関係のいざこざはあるだろうが、公立と比べたら親としたら安心した環境だろう。

まずは中学受験の勉強がムリゲー

いわゆるお勉強が問題なくできる少数の高IQのタイプ以外は、ほとんど「発達グレー」などと呼ばれる、知的障害のレベルではないけれど、普通学級にいるのはツライ、というタイプである。学校では宿題を減らしてもらったり、ノートを取るのではなくタブレットで撮影でOKにしてもらうなどの配慮をしてもらっている子も多い。ようは、勉強が大の苦手、のび太タイプなのである。公立の学校のテストでも点がとれない(もしくは受けるのを拒否)ような子が、中学受験に向けて週に何回か塾に通い、模試を受け、過去問を解き、…そんなことができるとは思えない。

入学してからも配慮なしで前途多難

私立は公立のような通級指導教室もないし、個別配慮もない。「他害があるので目をかけてほしい」などもってのほかだし、ほかにも「書字ができないのでテストは聞き取りでお願いしたい」「全体指示が通らないので個別で声をかけてほしい」「繊細なので女性の担任の先生が良い」…など、公立の小学校では担任の先生や通級の先生と連携できていたことも、私立となるとほかにも受験してきている「普通の子」がいるわけだから、わざわざ学校運営の負担となる子を合格させる学校はまずないだろう。

トラブルや問題を起こせば退学もありえる

多動・他害など、周囲に迷惑となる行動が繰り返されれば、退学を促されることもある。
私立では自由な校風で自主性を重んじている学校は往々にして偏差値が高いし、逆に校則が厳しいが面倒見がよいキッチリした校風の学校は、人と違う行動をとったりみんなと同じようにできないものは指導の対象となってしまう。私が行っていた中学は「校則が厳しく規律正しい学校」であったが、「傘は無地と決まっているのにワンポイントが入っていた」とか、「ピンは棒状でなければならないのに、ちょっと楕円系のバレッタをしてきた」とか、「文化祭の日にカラーのリップをつけていた」とか、かなりどうでもいいことで注意され、それが度重なると「要指導生徒」認定されてしまう。
先生に注意ばかりされている子はその学校内では「不良」の角印を押されてしまうが、卒業してしまえば、なんでアレがあれほど注意されていたのか謎である。
本当に人として問題な行動を起こしたのならまだしも、本人にとっては理不尽なことで注意を受け、(学校の校則=ルールを破っているとはいえ)居づらい環境になってしまう可能性もある。

中学受験に向いている発達障害のタイプとは

発達障害の特性にはいろいろあって、個人個人でみな違う。特性によっては私立中学のほうが合う、または中学受験を乗り越えられる耐性があるタイプはどんな子の場合か考えてみた。

IQの高いタイプ

IQの高いタイプの発達障害の場合。もともと勉強が得意で、「小学校の勉強なんて退屈すぎて」という子は、中学受験塾での難しい勉強はやりがいがあるものとなるかもしれない。

発達凸凹の凸が突出したタイプ(いわゆるオタク)

今は中学受験でもさまざまな入試形態がある。「算数一教科入試」「英検〇級を持っていると〇点加算」中には「レゴを使った入試」など。国語が苦手だからという理由で「算数一教科入試」がいいんじゃないか!?と安易に考えてはいけない。「算数一教科入試」なんて、算数だけ超絶天才的にできる奴が受けるものである。算数オリンピックに出るとか、くもん算数(数学)を最後まで終了しているとか…。「レゴ入試」もきっとそう。うちの子はレゴばっかやってるからいいかも!というレベルでは難しい。レゴで大人が度肝を抜くような作品を創作し、それを論述してプレゼンできるまでのレベルが求められる。それくらいの「凸」な特性があるなら受けてみる価値があるだろう。

また、突出した凸があって、明確な将来の夢がある場合は、私立に行くモチベーションも上げやすい。
「昆虫が大好きだから将来は大学で昆虫の研究をしたい」「ゲームが好きすぎて、すでにプログラミングでゲームを作ってしまっている」など。将来の夢が明確なタイプは、自己肯定感も高く、私立に行く価値も、合格の可能性も充分秘めていると思う。ただ、発達障害の子は小さいころから怒られることや注意される経験が多く、自己肯定感が低い子が多いのも事実だ。さかなクンのようなタイプは非常に稀なのである。

他害がないこと

人間関係のトラブルはどこの中学でも思春期なのだから多少はあるだろう。ただ「他害」やあまりにも他人に迷惑をかけるレベルのコミュニケーション能力では、私立中学での生活は難しいだろう。私立では加配は配慮はない。まして他害案件や、ものを壊すなどの行動が見られた場合は停学や退学処分になる。

持ち物や提出物の管理など最低限の自己管理ができるか、できないなら自分でカバーできる力があること

忘れ物が多い、提出物ができない、という問題を抱える発達障害の子も多い。例えば、忘れ物をしないための工夫を自分で考えてできたり、その場でコミュ力などで対処できるタイプであればよいだろう。

不登校でないこと・遅刻癖がないこと

家から徒歩圏内の公立小学校への行き渋りがすでにある場合は、電車やバスを利用する私立中学への通学はもっと負担になるだろう。行き渋る理由が「いじめ」や「勉強が簡単すぎてつまらない」等である場合は、中学受験で環境を変えてよい方向に向かせることも可能だろう。「勉強についていけない」「人間関係が疲れる」「朝起きられない」「なんとなく行きたくない」「繊細過ぎる」等が理由の場合は、中学で新しい環境になったところで挽回できる可能性は低いと思われる。
慢性的に遅刻癖がついている子も、「朝が苦手」「時間にルーズ」であることは、私立の中学では厳しく指導されるため、(というか基本的にみんなちゃんとできる)学校生活を送るうえではきつくなってくるだろう。

中学入試で特性を伝えるか否か

特性を伝え、入試や学校生活での配慮をお願いした例

私が聞いたことがある話では、お子さんが中学受験をするにあたり、「漢字がまったく書けないが、作文の試験ではひらがなで書いてもよいか。それで合格の可能性がないなら受験はしないので、教えてほしい」と色々な学校に問い合わせたらしい。その中で1校、「ひらがなで書いてもOK。ただ、作文用紙からはみ出してもいいので、多めに書くようにしてください。」と言っていただいた学校があったとか。

自分の子どもの特性を伝えたうえで、「合格の可能性はない」ならば、はじめに言ってもらったほうが確かにいいだろう。受験料も、受験準備も無駄になってしまう。

結論、中学受験でハッピーになれる発達障害の子は一部

このように、まず受験に対応できる学力や忍耐力があること、入ってからも(配慮なしでも)やっていけること、が中学受験に向く子であろう。「合格さえすれば(入学してしまえば)安心」では決してない。その子にぴったりだと思って期待を胸に入学しても、思い描いたような学校生活が送れず壁にぶつかってしまうことも必ず起こるし、私立の場合はより自己解決が求められる。不合格になってしまった際の心のケアも普通の子以上に必要だ。
親が伴奏できるだけの経済力も必要だ。小学校の宿題をやらせるのだけでも地獄であれば、塾の宿題などもってのほかだろう。

公立の良さも考えてみる

・家から近い
・自治体によっては、市内の学校を自由に選べる
・通級指導教室がある
・小学校から申し送りしてもらえる
・給食がある
・授業料が無償(給食費、修学旅行費、制服代、などの「学校教育費」は別)

人間環境の問題、内申の問題など、不安なことは先生などに相談しつつ、最大限この場所での環境調整をしていくのが良いのではないか、と自分に言い聞かせている。

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この記事を書いた人

小学生の息子を育てながら働くワーキングマザーです。
息子はADHD・ASD・LDの特性があり、幼児期から療育や支援サービスを利用してきました。 現在は普通学級に通いながら、通級指導教室や放課後デイサービスを併用し、日々の生活や学習をサポートしています。
このブログでは、これまでの経験や試行錯誤の中で得た気づき、便利だったサービスやアイテムなどをまとめています。 同じように子育てに悩む方のヒントになれば嬉しいです。

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